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都道府県の役割の進化

 

 我が国の地方自治制度は明治以降さまざまな変遷を経て現在に至っている。戦前には現在の都道府県と市町村の二層制が確立し、戦前、戦後の三回の市町村合併の推進を経てその基盤の強化が図られた。さらに近年では地方分権改革により地方公共団体の役割と権限が拡大し、中央政府の関与や義務付けは限定的になっている。1999年の第1次地方分権一括法以来、継続的に進められてきた国から地方公共団体への事務・権限の移譲は都道府県から市町村への事務・権限の委譲へと進みつつあり、2020年には第10次となる地方分権一括法が制定されその改革は現在も進行中である。

 

そのようななか今後着目すべきは都道府県の役割であると考える。人口減少が進み、市町村は厳しい人的・財政的資源のなかで、人口密度が低下し高齢化が進む地域の行政サービスを維持することが求められている。一般的に人口減少と高齢化は行政サービスの非効率化やサービス水準低下の要因となる可能性が高く、とりわけ人口減少が著しい地方の市町村では、I T技術の活用などを持ってしても、きめ細かな、あるいは専門的な行政サービスの展開やサービスの維持・効率化への取り組みに限界が生じることが予想される。事務委託や共同設置・共同処理など市町村どうしの横の連携も重要であるが、地域によってはそれにも限界がある。都道府県の市町村への補完機能を高め、市町村での対応が困難な一部の事務を都道府県が自ら実施することが必要ではないか。特に多額の財源を必要とする事業や専門的人材を必要とする事務、人的負荷が高い事務についてその必要性は高い

 

個々の市町村の実情に応じて必要な事務のみを都道府県が担う「まだら集権」が望まれる。もちろん都道府県にとっては人的、財政的負荷が高まるが、もとより市町村と都道府県は同じ住民を構成員としている。市町村の枠組みを残しつつ必要な行政サービスを効率的に維持する意義は市町村と都道府県が共有すべき目的であり、国家制度としての対応が必要である。人口減少社会における地方公共団体の役割は、さらに進化していくことが期待されている。

 

[2020年実施研修より]