制度理論と政策形成

 私たちの社会は税制や社会保障制度など多くの法制度を構築して運営されている。公共政策の手段としての法制度のあり方を考えていく上で、制度理論(Institutional Theory)の視点を活用することは有用ではないかと考える。

 

制度理論における制度とは税制や社会保障制度などの法制度そのものとは異なり、様々な環境要素によって動く組織や個人が認識する実質的な作用と経済に与える影響を含めた、社会システムとしての役割そのものを指す。

 

 我が国の主要な法制度はその多くが戦後から昭和30年代に集中して制定されている。時々の課題に対応するための改正は行われてきているが、基本的な枠組みは当時から変わらない法制度も多く存在している。一方、この間の社会環境、経済環境、技術進歩、人口動態などの変化は著しく、国民の意識や情報量も大きく変化している。

 

社会保障制度や税制、地方自治制度などの我が国の基本的構造を形づくる主要法制度は、制度論の視点から見ても多段階、多分野の多くの組織、様々な立場の個人が関与し、多くの法規則などのフォーマルな制度とそれぞれの組織や分野の慣習などのインフォーマルな制度が複雑に影響しあい、また制度を取り巻く環境の変化の要因も多いなど、極めて複雑な制度環境にある。しかしそれ故に目先の課題への対応に終始し、いつしか法制度そのものが本来果たすべき役割に鈍感になってしまっている危険がある。

 

法制度が国民や経済主体にとって実効性のある社会システムとなっているのか、制度理論を活用してその実態を考察することは将来に向けた社会運営において重要な視点である。

 

 人口減少と長寿化、経済成長と情報通信技術の進歩などを背景に社会環境や国民の価値観は急速に変化し続けている。社会を支える法制度は常にその時代に有効な社会システムとして機能することが国や国民にとって望ましい姿である。公共政策における制度理論の活用はまだ多くはないが、今後の発展が期待される分野である。

 

[2021年発表原稿より]