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分権改革に残された課題

 コロナ禍への国の政策は迷走と行き詰まりを見せ、図らずも中央政府にかねて指摘されてきた様々な課題を現実のものとして露呈する状況となった。一方で地方公共団体もまたその能力の限界を明らかにしている。

 

これまで20年以上にわたって進められてきた地方分権改革は、国から地方公共団体への権限や財源の移譲、国の関与や法令による義務付けの廃止などを内容としてきた。このような分権改革に積み残された課題として、低迷する地方公共団体の行政能力や地方議会の存在意義などが指摘されてきた。

 

 コロナ禍への対応において地方公共団体は、「相互参照」と呼ばれる他自治体の政策参照が政策の立案なき「過剰な同調性」へ、中央政府との関係も地方分権の理念である「自立・対等」とは程遠い国への「追従・忖度」の様相を見せている。

地方公共団体の意識と能力もまた日本という国家の実力の一部分であり、残念ながら憂慮すべき実態にあることが明白となった。

分権改革が進んだいま、地方公共団体の行政能力と自立意識の向上は急務である。

 

[2021年講演より]