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都市は誰のものか ーこれからの都市経営の視点ー

 地方公共団体は一定の区域を基礎とし、その構成員は区域内に住所を有する住民である。地方自治の原理の一つが住民自治であるように、地方公共団体は区域内に住所を有する住民の意思に基づき運営されることが我が国の地方自治制度の原則である。一方で政治や経済、文化などの中心機能を有する都市のあり方を考える時、都市行政における地域住民への行政サービス提供と都市機能の維持や将来に向けての取り組みは、その視点をいささか異にすべきではないかと考えている。

 

外国人の増加や多国籍化などを背景に地域における多文化共生が推進され、言語や文化的背景の異なる外国人住民を地方公共団体の構成員として受け入れるための取り組みは現在も多くの地域で進められている。これらの取り組みは構成員への行政サービスを担う地方公共団体の本来的な機能を果たすために必要な政策として避けることができないものであるとともに、今後もその重要性は変わることはないであろう。

 

 一方で大規模都市が果たしている様々な都市機能を考える時、その機能の維持と発展を図っていくための政策には、住民への行政サービスとは別個の視点が必要である。もとより都市に集いそこで活動する人々は住民のみではなく、それぞれが都市機能に関連する目的を有して存在している。日本人であっても他地域居住や働き方の変化に伴いライフスタイルは多様化し、加えて多くの外国人が集う国際的な都市であればそれは一層加速される。都市機能を内外の人々に開かれたものとすることで、都市がさらに発展していくであろうことを考える時、経済活動や文化活動、観光や都市の利便性に着目した居住滞在など、都市機能を利用する人々をいかに支えるべきか。それには地域への受け入れを目指す多文化共生とは異なる、利用者視点に立ったアプローチが必要である。

 

 地方公共団体は伝統的に地域性を基本とした行政活動を展開してきた。一方で都市機能を目的としてそこに集う人々に対しては、機能を利用しやすい環境をつくっていくことに政策の手法を特化していく必要がある。都市機能を利用し支える人々の目的や利用環境に合致する法制度、同じ目的や関係性を有する人々の交流を支える環境、それらを有機的に繋げるためのプラットフォームづくりなどが必要である。これからの都市経営には、政策の手段において地縁と志縁を使い分けて展開していくことが求められる。

 

                                     [神戸市研究会報告書への寄稿]