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30年ぶりに再会した茶碗

就職した年から2年間、最初の赴任地として過ごした山口県。小京都と言われる山口市をはじめ歴史と伝統が残る地域。周囲の皆さんに本当に良くして頂き、公私ともに充実した日々を過ごした思い出の地である。

 

当時山口で大変お世話になった方のご家族から連絡があった。昨年ご夫妻が相次いでお亡くなりになったとのこと。最近、家の整理をしていたらこのお茶碗が出てきたのですが、金崎さんの作では、とのこと。添付されていたのはお茶道具が載せられた茶碗、高台の「けん」のサインはまさしく自分のものだった。

 

山口にいた頃、美祢に焼き物の先生がいらしてそこに毎週通っていた。萩焼の産地でもある山口で焼き物の楽しさと奥深さに触れ、下手ながら多くのものを作ったのだが、東京に戻るに際してご夫妻に差し上げたものだった。あれから30年、ずっと大切に持っていて頂いたとは。

 

自分が持っているよりも、ご家族が送っくださった。30年ぶりに再会した茶碗。当時の自分そのままに不器用で抹茶茶碗にしては重い。これをずっと持って頂いていたご夫妻の思い出と感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。

 

自分自身の原点でもある山口県。多くの思い出を振り返りにまたゆっくり訪れてみたいと思う。